出会い系アプリ。
もし私が10歳ほど若ければ、確実に使用していただろう。


企画から運営までひたすら面倒くさい合コンや、後腐れが残ると厄介なコミュニティ内での恋愛とは違い、気軽に始めて気軽に終えることができる。
実に素晴らしい恋愛ツールである。もう少し生まれるのが遅ければ存分にその恩恵を享受できたのに、勿体のないことをした…

最近はコロナの流行が収まらないということもあり、出会いの場がもっぱらアプリに移行しているようだ。
色々な人の書き込みやつぶやきを読んでいて、どんなものかとても興味がわいたので、論文を調べてみたら面白い研究が見つかったので、今日はそれを簡単に紹介したい。


Tinderと恋人づくり:大規模な縦断的研究
Erevik, E. K., Kristensen, J. H., Torsheim, T., Vedaa, Ø., & Pallesen, S. (2020). Tinder use and romantic relationship formations: A large-scale longitudinal study. Frontiers in Psychology11, 1757.



データ収集は2015年から2016年とやや古めのもので、ノルウェーとベルギーの大学生・大学院生の男女1700名弱が対象になった研究である。
対象は学生であるが、日本に比べて一度社会に出てから大学に戻る人が多く含まれているので、参加者は22-23歳と大学生にしてはやや年長である。

研究では、
  • 1時点目に恋人のいない人をリクルートして、
  • 約1年後にTinderを使った人と、使わなかった人の間で恋人のできやすさに違いがあったか(2時点目までに恋人ができたか)を回答してもらった。
  • 恋人の有無だけでなく、性格やお酒や麻薬(日本より流通している)を嗜んでいるか、子どもがいるかどうか(研究が行われた国ではそれほど珍しいものでもないらしい)も尋ねた。



その結果、次のことがわかった。
  1. Tinderユーザーの方が、非ユーザーよりも1年後に恋人がいる確率が高かった
  2. Tinderユーザーは、非ユーザーより外向的(自信に満ちて社交的なタイプ)で、やや保守的(どちらかと言えば慣れ親しんだものを好むタイプ)、人懐っこい(人を信じやすい)傾向があった
  3. また、Tinderユーザーの方が非ユーザーに比べて飲酒量(頻度)や薬物使用率が高く、不安と抑うつが高かった
  4. 性格や飲酒・薬物使用傾向の影響を取り除くと、Tinderユーザーと非ユーザーの間で、1年後に恋人がいる確率は異ならなかった。
  5. 要は外向的で人懐っこい、お酒やドラッグを嗜む人は元々恋人ができやすいが、そういう人はTinderもよく使うので、結果とTinderユーザーの方が1年後に恋人いる率が高くなっている。
  6. 特に飲酒量(頻度)・ドラッグでその傾向が強く表れており、よく飲酒する人ほど恋人ができやすく、なおかつ、そういう人はTinderを使う傾向にあった。


ちょっと身も蓋もない話であるが、元々アプリを使わなくても恋人を作りやすいタイプの人が、アプリに手を出しやすく、新たな出会いの場で恋人をゲットしている。まぁ、結局はそういうことである。

資本主義社会よろしく、富めるものほど株や投資に手を出しやすく、そこでさらに富を得ているというのと同じ構造がありそうだ…

ちなみに、この研究では容姿は調査対象になっておらず、また身長や経済力といった婚活で重要になる事柄の影響がどの程度なのかもわからない。
ただ、外向的かどうかと容姿は相関する(イケメン、美女ほど朗らか)であることから、データ以上に、現実世界では富めるものが更に富めるという構造が成り立っているのではないだろうか。
戦闘力の高い男女は、自分のモテ度をよくわかっており、もっと良い恋人を探すべく、Tinderの世界に繰り出しているのかもしれない。

その一方で、この研究のデータは、Tinderで成功するには
  • 外向性(積極さ)と
  • 酒の力 
が必要である可能性も示している。


コロナ禍では外での飲酒がしにくくなっている。もしかすると、今は普段のモテ男・モテ女が異性をオトすテクニックが使えず、普段モテないタイプが打って出るチャンスかもしれない…
と、ここまで書いておきながら、「いや、積極的な男女は外で飲まなくても宅飲みするか」と即座に直前の思考をキャンセルするのであった。

アプリと恋活・婚活については色々研究が出回ってきているようなので、また適宜取り上げていきたいと思う。